2015年10月11日日曜日

詩人 茨木のり子

久しぶりに茨木のり子の詩集を読みました。
すがすがしく生きたいと思う心をありのままに
確かな視線と優しい言葉で綴っています。
感傷や悟りに逃げない作品に明日を感じます。
私の好きな作品二つご紹介いたします。

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自分の感受性くらい
茨木のり子

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを 近親のせいにはするな

なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを 暮しのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ

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倚りかからず
茨木のり子

もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない

もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない

もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない

もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくない

ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある

倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ



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